社長ブログ2020年02月07日

言葉の重み

 今年6月からの改正食品衛生法施行に向けて、札幌市では保健所からの電話連絡等が食品事業者の皆様に行われているようです。弊社のお客様でも、2社からそのような電話があったと、話題になりました。

 その2社から聞いた話で共通していたのが、先ずは従業員の人数の確認を行い、「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」を行うにあたって、50人以下の事業者(2社とも該当)は、①今まで通りのことをしていれば良いですよ、HACCPは取り組まなくてもよいです②ちょっとやればすぐに対応できます、という内容だったようです。

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 1社は食肉工場、もう1社は菓子工場です。共に厚生労働省のホームページに、従業員50人以下の事業者向けのガイドラインが出されている業種です。すかさず、保健所に確認の電話を入れたところ、「そのような内容の話はしない」との回答・・・そうですよね(;´∀`)でも、電話で話を聞いた側は、「HACCPに取り組まなくても良い」と捉えた、もしくは「どうすれば良い?」と混乱したのは事実です。

 さて、ここで私が話題にしたいのが、話し方と伝え方。それも、立場をわきまえた話し方と伝え方です。大抵の食品事業者は、残念ながら保健所は苦手です。保健所の方がどんなにフレンドリーに近づいてきても(ありえませんが(笑))、心の中にある苦手意識は拭えないもの。そして、その一言一言が全て決定的な言葉であり、どんなに抗っても法律に基づいて言葉を発している保健所の方の言葉は覆らない、という諦めの気持ちは消し去ることはできず、あえなく言うことを聞くしかなくなるのです。それゆえ、今回の保険所の方の電話口での言葉は、あまりに軽率で誠意のない言葉だと感じてしまうのです。

 電話で確認した際の回答は想像通りで、「はい、そのように伝えました」とは言わないのは当たりまえです。法律に基づいたことを話すのが行政側の原則でしょうし、そこに個人の見解を挟むことは絶対にないのです。だから、きっとそのようには話してないのでしょう。でも大事なのは、自分が発した言葉が、相手にどのように伝わったかを意識する謙虚さだと思います。まして、立場の強い側の言葉は、間違っていても相手は間に受けて取るのですから。「自分はこう言った、勘違いした相手が悪い」ではなく、「相手はどう理解しているか、間違って伝わっていないか」と自問する謙虚さが必要だと思います。

 難しいと捉えられているHACCPの考え方を、どうやって敷居の低いものにして取り組みやすく伝えるかが、きっと根底にあるのだろうと思います。でも、誤解を招くような話し方、伝え方をしてはかえって事業者の方たちが混乱してしまいます。HACCPの考え方は至極合理的で、簡潔明瞭、難しいのは本格的に7原則12手順に沿って危害分析を行っていくそのプロセスであり、そこに出てくる耳慣れない言葉たちだと私は認識しております。その簡単で合理的な考え方を、どうやって平易な言葉で話して伝えるか、それがこれから大変な思いをして取り組んでいかなければならない食品事業者の方々に接していくときに、大事な姿勢になるのではないかと感じるのです。

 弊社の地方の菓子製造のお客さんが、新たに工場を建てて、どうせなら北海道HACCPの認証を取得したいと思い所轄の保健所へ相談に行ったところ、「〇〇さんのような人数の少ない工場はHACCPなんか取り組まなくてもいいんだよ」と言われたそうです。事業者のやる気スイッチをへし折るような暴言だと思いました。

 行政に携わる方々が皆そうとは思いませんが、ここで紹介した事例は、全て弊社のお客様(現場で日夜食品衛生法の下、食品製造に携わっている方たち)から聞いた実話です。今一度、伝える言葉の重さを振り返っていただきたいと、切に感じた次第です。

この記事を書いた人:小林樹夫

所属:代表取締役 担当:皆の社長(笑)

小樽の漁師町の生まれ
人生の前半を小樽、函館で過ごし、酸いも甘いも色々経験(笑)後半の人生は、死ぬまで札幌で修行の予定。
さていよいよ50代最後の1年、来年は折り返しの年です。頑固でありながらも、いつまでも柔軟な感性を失わない、しなやかな社長=親父=おやじを目指してます❗