社長ブログ2023年07月15日

低温調理の解釈

 平成24年7月から、牛レバーの生食が食品衛生法に基づき禁止されました。もう11年も経つのですね。でも、日本人の生食好きは止められなく、この11年の間に現れたのが「低温調理」で処理された「肉刺し」です。初めて目にした時には、「?ありなのか?」と思いましたが、改めてその現実を知ると、非常に危険極まりないメニューだと思います。

 「低温調理」「低温殺菌」・・・低温という名のつく調理法が、食べたいものの安全性を無視し、嗜好性を優先させて解釈されているようです。

 低温調理 : 真空パック詰めした魚やお肉を40〜70度台のお湯の中に入れてじっくり  

        加熱する方法 です。一定の低温度で加熱し続けることにより、食材が柔

        らかくジューシーに仕上がるのが魅力です。

 低温殺菌 : 牛乳、食肉製品など食品衛生法で製造基準が決められている食品の殺菌

        条件で、「食品の中心温度」を63度で30 分間行う殺菌方法です。ただ

        し、必ずしも63度でなければならないというわけでなく、製造メーカー

        は各社殺菌時間を短縮するために70度や75度等で行う場合もあります。

 さて、ここで大事なのは「低温調理」は嗜好性を優先、「低温殺菌」は安全性を優先させているということと、「低温殺菌」の加熱条件が「食品の中心温度」であるという点です。ただ、現実はつくりたい側の都合の良い解釈で、低温殺菌の63度30分という数字だけを低温調理の調理条件に当てはめているわけで、つまりは63度のお湯の中に30分いれて調理しているケースがほとんどです。お湯に入れる肉の塊の大きさの基準もなし・・・当然大きな塊で調理するほど中はまだ生の状態です(それが目的ではありますが💦)。結果、本来の低温調理での出来上がりとも異なる代物(ある説明を読むと、低温調理した肉の状態が「まだ中が赤い場合は食中毒の危険性がある」と警告しています)で、かつ殺菌しているとは言え表面しか安全に殺菌されていない、という中途半端な食べ物なっているわけです。

 ただ、一番の問題は行政の曖昧な対応だと炎上覚悟で書かせてもらいます。今から12年前の「焼肉酒家えびす」の集団食中毒事件後に、もともとあった「ガイドライン」という弱気の指導から「食品衛生法」で禁止とするという強硬指導に入り、肉の生食ができなくなりました。人が死んで初めて、強硬指導に入ったわけです。そしてその後に現れた「低温調理」による「肉刺し」というメニュー。内臓肉がメインのメニューです。どう考えても、提供を禁止するべきメニューだと私は考えます。特にレバーについては、生食が可能だった時代には「生食用のレバー」と「加熱用のレバー」が流通していたわけですが、今は「生食」が禁止ですから「生食用レバー」は現実流通してなく、全てが「加熱用レバー」です。それを中途半端な加熱で提供するわけですよ・・・(過去に生食が可能だった時代、牛レバーでO157の事故を起こしていたのは「加熱用レバー」を「生食」で提供していたケースがほとんどだったようです)ただ、飲食店側からすれば人気メニューだし、保健所からは出すな、とはっきり言われていないので、提供したくなるのもわかる気がします。とは言え、どうやっても安全性を担保できる調理法ではないメニューですので、白黒明確なジャッジを下してあげたほうが飲食店もあきらめもつくのでは、と私は考えます。やはり生食好きの日本人、危険を顧みずに旨さを求めて人気メニューになっている店舗が多いのが現実。でも本当は危険と背中合わせのメニューなのです。

 また人が死ななければ法律は変わらないのでしょうね・・・

 

 

この記事を書いた人:小林樹夫

所属:代表取締役 担当:皆の社長(笑)

小樽の漁師町の生まれ
人生の前半を小樽、函館で過ごし、酸いも甘いも色々経験(笑)後半の人生は、死ぬまで札幌で修行の予定。
さていよいよ50代最後の1年、来年は折り返しの年です。頑固でありながらも、いつまでも柔軟な感性を失わない、しなやかな社長=親父=おやじを目指してます❗