社長ブログ2019年12月15日

衛生管理計画と手引書:かなり長文になりました・・・覚悟を決めて読んでください(笑)

 来年6月1日から施行される改正食品衛生法の一部である「HACCPに沿った衛生管理の制度化」において、全ての食品等事業者に求められる具体的な行動は、衛生管理計画をたてて衛生管理を「見える化」することですが、その参考書として厚生労働省が各業界団体に作成させたガイドライン(手引書)について、少々私見を述べたと思います。

 厚生労働省のホームページで公開されているガイドラインを見ると、分かりやすくまとめられているなと感じるもの、欲張りすぎてわかりづらくなっているなと感じるものがあります。様々な業種、同じ業種でも様々な業態がある中で、ひとつのガイドラインにまとめる作業は一筋縄ではいかないので、出来上がったものに対して分かりやすい、分かりづらいと難癖をつけるのはナンセンスかと思います。それでもその業界の事業者は、それに縛られて衛生管理計画を立てなければいけない、と考えるのですから、やはり分かりやすいガイドラインの方が評価をうけやすいのは、致し方がないのだろうと思います。ただ、ここで考えたいのは、本来の衛生管理計画は、基本的にはどの業界の食品事業者にも同じ内容のものが求められるはずであり、それは弊社のホームページ(HACCP制度化への対応)でも説明させてもらっている

  • 施設・建物の管理
  • 設備・器具類の管理
  • 人の管理
  • 取り扱う食品の管理

の一般衛生管理と

  • 調理・製造工程で危害を除去する重要管理点の決定とその管理

の、いわゆる危害分析と重要管理点、すなわちHACCP                 

の2本柱であります。

 今回の法改正の中で、50人という人数を境に「HACCPに基づく衛生管理」と「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」に分けた事を踏まえると、今回の衛生管理計画で一番難しいと考えるのが、危害分析と重要管理点の決定であることは明確であります。それ故、その部分を分かりやすく解説するのがガイドラインであって欲しいと思います。

 さて、ここから本音で、私の立場で言うと、会社の業績に影響を与えそうですが(笑)・・・HACCPを本格的に行っていくと、食べることの本来の目的を失っていくな・・・と感じることが良くあります。以前のブログにも書きましたが、本来は美味しいことが優先された食べ物が、安全性を優先させるが故に美味しさをないがしろにする風潮が見られる、いや実際にそのような言葉を私の経験の中で耳にしています。起こり得る全ての危害を除去もしくは低減することが、HACCPの前提です。でも、それが難しい料理や食文化を持ち得たのが日本の食文化だと私は認識しています。そもそもが、レトルト食品とフリースドライで作られる宇宙食の安全を担保する衛生管理の仕組みがHACCPの始まりです。多種多様な調理法や生に近い料理が存在する日本の食文化に適用させることは、なかなか困難だと私は感じ続けながら、この仕事を続けています。それゆえに、今回の「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」の中での「重要管理」の捉え方は、HACCPの考え方を広く浅く普及させるためにも、日本の食文化に適応した非常に合理的な考え方だなと、感じておりました。

 私のホームグランドの札幌には「さっぽろHACCP」という衛生管理の認証制度があります。平成14年に法人化した弊社は、平成16年に設立された札幌市衛生管理ネットワーク協議会という組織の会員になりました(当時一人で業務をこなしていた私は度重なる会議にプレッシャーと絶望感を感じ(笑)1年で退会しましたが・・・平成29年に復帰しております)その時の発起人であった当時の食品衛生係長の方の言葉、「ラーメンの親父でもできるHACCPを目指したい!」に感銘を受け、それなら弊社も協力したいと考えたのです。それこそが正に、今の「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」ではなかったのかと、思うところですが、当時の協議会の会議では、やはりHACCPの本質にこだわった会員との喧々諤々のやり取りが続き、結局のところ、現状のさっぽろHACCPは、ラーメン屋の親父ではなかなかハードルの高いものになってしまっているな、と感じるのでした(賛否両論あるかと思いますが、今回は私の私見ですのでご容赦を) 

 そして、結局のところ・・・どの規模のどの業種であれ、一般衛生管理の手順書すら持ち得ていない中小の食品事業者に、HACCPを理解して普及させるためには、先ず、「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」から始めることが大事ではないかと思います。もっと極論を言えば、本来は「HACCPの考え方に基づいた衛生管理」を行わなければならない業態の食品事業者でさえも、まずは「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」から始めるのもありなのでは?とさえ感じます。

 トヨタ生産方式であるジャスト・イン・タイムを研究している団体が出している「改革のための10箇条」なるものがあり、その中に私の好きな言葉があります。

  「パーフェクトを求めるな、50点でもよい、すぐやれ」

行動しなければ何も始まりません。行動しながら100点を目指す、でなければ、今回の法改正の中での衛生管理計画は出来得ないのではないかと、思います。そのためのガイドラインではありますが、各業界のそれに縛られず、まずは衛生管理計画の本質の中で、できることから始めることが、今回の改正の大きなポイントではないかと最近感じております。

 厚生労働省のホームページに、「HACCPに沿った衛生管理の制度化に関するQ&A」というのが出ております。

   https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000153364_00001.html

様々な質問に関する回答が掲載されておりますが、どうしても行政の立場での回答である感は否めませんが、それは致し方がないことなのだろうと理解はしております。ただ、行政の中でも現場の指導に当たらなければならない立場の方たちや、実際に行動を起こさなければならない食品事業者の方たちは特に、具体的に何をやればいいのかを一番求めていると思います。そのことについての私見は、次回の投稿でお伝えしたいと思います。

※ここまで読んでくださった方、お疲れ様でした<(_ _)>

 

この記事を書いた人:小林樹夫

所属:代表取締役 担当:皆の社長(笑)

小樽の漁師町の生まれ
人生の前半を小樽、函館で過ごし、酸いも甘いも色々経験(笑)後半の人生は、死ぬまで札幌で修行の予定。
さていよいよ50代最後の1年、来年は折り返しの年です。頑固でありながらも、いつまでも柔軟な感性を失わない、しなやかな社長=親父=おやじを目指してます❗